コーヒードリッパーの形状による味の違いを1ヶ月間本気で検証してみた
「毎朝のコーヒーが美味しくなれば、仕事のパフォーマンスも上がるはず」そんな期待を胸に、私は2023年11月から1ヶ月間、コーヒードリッパーの形状による味の違いを本格的に検証してみました。
検証のきっかけと背景
IT企業で働いていた頃から、朝のコーヒーは欠かせない存在でした。しかし当時使っていた安価なコーヒードリッパーでは、同じ豆を使っても「なんとなく物足りない」と感じることが多々ありました。コーヒー講師になってから生徒さんに「どのドリッパーを選べばいいですか?」と頻繁に質問されるようになり、「理論だけでなく、実際に自分で徹底比較してみよう」と決意したのです。
検証に選んだ3つのドリッパー
今回の検証では、形状の特徴が異なる代表的な3種類を選定しました:
ドリッパー名 | 形状の特徴 | 価格帯 |
---|---|---|
ハリオV60 | 円錐形・スパイラルリブ | 約1,500円 |
カリタ3つ穴 | 台形・直線リブ | 約1,200円 |
コーノ式円錐 | 円錐形・下部リブなし | 約2,800円 |
検証条件を統一するため、同じエチオピア産シングルオリジン豆(中煎り)を使用し、毎朝7時に15gの豆で200mlのコーヒーを抽出。湯温、挽き目、抽出時間まで可能な限り同一条件で行いました。忙しい朝でも継続できるよう、前日夜に豆を計量しておくなど、社会人ならではの工夫も取り入れながら進めました。
検証に使った3つのドリッパーと選んだ理由
今回の検証では、形状の異なる3つのコーヒードリッパーを選定しました。選択基準は「形状による抽出への影響が明確に分かること」と「初心者でも入手しやすいこと」の2点です。
検証対象の3つのドリッパー
ドリッパー名 | 形状の特徴 | 価格帯 | 選定理由 |
---|---|---|---|
HARIO V60 | 円錐形・スパイラルリブ | 1,500円程度 | 抽出速度が速く、技術による味の変化が顕著 |
カリタ102 | 台形・3つ穴 | 800円程度 | 安定した抽出が可能で初心者向け |
コーノ式 | 円錐形・直線リブ | 2,000円程度 | ネルドリップに近い味わいが特徴 |
なぜこの3つを選んだのか
実際に社会人の方がコーヒードリッパーを選ぶ際、形状の違いによる味への影響を理解することが最も重要だと考えました。円錐形のV60とコーノ式、台形のカリタ102を比較することで、穴の数やリブ(溝)の形状が抽出にどう影響するかを明確に検証できます。
また、価格面でも現実的な選択肢として、すべて3,000円以下で購入可能な製品を選定。特に平日の忙しい朝でも安定した味を出せるカリタ102と、週末にじっくり技術を磨けるV60、そして独特の風味が楽しめるコーノ式という、用途別の使い分けも想定した組み合わせにしました。
次章では、これら3つのコーヒードリッパーを使って同じ豆で抽出した際の、具体的な味の違いと抽出時間の変化について詳しくお伝えします。
同じ豆・同じ条件で抽出するための準備と工夫
検証を始める前に、最も重要だったのは「同じ条件で抽出する」ための環境作りでした。異なるコーヒードリッパーの特性を正確に比較するには、ドリッパー以外の要素を完全に統一する必要があります。
使用した豆と基本条件の統一
今回の検証では、エチオピア産のシングルオリジン豆(中煎り)を選びました。この豆を選んだ理由は、フルーティーな酸味と甘みのバランスが良く、ドリッパーによる味の変化を感じ取りやすいからです。焙煎日から5日以内の豆のみを使用し、毎回20gの豆を中挽きに統一しました。
抽出条件は以下の通り厳密に管理:
– 湯温:90℃(温度計で毎回計測)
– 抽出時間:3分30秒
– 蒸らし時間:30秒
– 総注湯量:300ml
– 注湯回数:4回に分けて注湯
検証精度を高めるための工夫
平日の朝は時間が限られるため、土日に集中して3種類のドリッパーで連続抽出を行いました。味覚の変化を避けるため、各ドリッパーでの抽出間隔は15分空け、口の中をリセットするために常温の水を飲んでから次の抽出に移りました。
特に重要だったのは注湯の仕方を統一することです。V60、カリタ、ハリオでは穴の数や形状が異なるため、自然と注湯パターンが変わってしまいがちです。そこで、スマートフォンのストップウォッチを使い、30秒蒸らし後に1分間隔で注湯するリズムを作り、毎回同じ手の動きで抽出するよう心がけました。
この準備段階での工夫により、純粋にコーヒードリッパーの形状による味の違いを検証することができました。
V60で淹れた1週間の記録と味の変化
毎日同じ時間に淹れて感じた繊細な変化
V60での検証は、平日の朝7時に統一して行いました。使用したのはエチオピア産のシングルオリジン豆(中煎り)で、毎日15gの豆に対して240mlのお湯を使用。このコーヒードリッパーは想像以上に繊細で、わずかな注ぎ方の違いが味に大きく影響することが初日から分かりました。
注ぎ方による劇的な味の変化
1日目は勢いよく注いでしまい、酸味が強すぎて飲みにくい結果に。2日目からは注ぎ方を調整し、「の」の字を描くように細く注ぐことを意識しました。特に3日目の朝、蒸らし時間を30秒から45秒に延ばしたところ、甘味と酸味のバランスが劇的に改善されました。
日数 | 注ぎ方の変更点 | 味の変化 |
---|---|---|
1-2日目 | 勢いよく注ぐ | 酸味が突出、苦味不足 |
3-4日目 | 蒸らし時間を45秒に延長 | 甘味が増し、バランス改善 |
5-7日目 | 3回に分けて注ぐ | クリアで雑味のない味わい |
V60の特徴が見えてきた1週間
7日間の検証で、V60は技術次第で味が大きく変わる上級者向けのドリッパーだと実感しました。特に注ぎの速度とリズムが重要で、慣れるまでは安定した味を出すのが困難です。しかし、コツを掴めば豆本来の個性を最大限に引き出せる優秀なドリッパーでもあります。忙しい平日の朝には少し手間がかかりますが、週末にじっくり向き合いたいコーヒードリッパーという印象です。
カリタ式で淹れた1週間の記録と気づいた特徴
カリタ式の台形構造が生み出す安定感
V60での検証を終えた翌週、今度はカリタ式の3つ穴ドリッパーを使って同じエチオピア豆で毎日抽出を行いました。カリタ式の最大の特徴は台形の形状と底部の3つの穴にあります。この構造により、お湯の流れがV60よりもゆっくりになり、抽出時間が自然と長くなることを実感しました。
1週間の記録を振り返ると、最も印象的だったのは味の安定性でした。V60では日によって微妙な味の違いが生じていましたが、カリタ式では毎日ほぼ同じ味わいを再現できたのです。これは忙しい朝の時間帯に、技術に左右されず安定したコーヒーを淹れたい社会人にとって大きなメリットだと感じました。
検証日 | 抽出時間 | 味の特徴 | 満足度 |
---|---|---|---|
1日目 | 4分30秒 | まろやかで苦味が少ない | ★★★★☆ |
3日目 | 4分45秒 | コクが深く、酸味が穏やか | ★★★★☆ |
7日目 | 4分40秒 | バランスが良く飲みやすい | ★★★★☆ |
初心者にやさしい「失敗しにくい」構造
カリタ式コーヒードリッパーを使用して気づいたのは、注湯のスピードや技術的な差が味に与える影響が少ないことでした。台形の構造により、お湯が自然とゆっくり落ちるため、急いで注いでも過抽出になりにくく、「失敗しにくいドリッパー」という印象を強く持ちました。特に平日の慌ただしい朝でも、安心して使える点は大きな魅力です。
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